売買重要事項 建物状況調査のその後
2018年宅建業法改正 売買 建物状況調査
近年、宅地建物取引業法の改正が立て続けにあっており、売買・賃貸共に宅地建物取引士が行う、重要事項説明書の説明項目が増え、重要事項説明書のページ数も比例して増加の一途を辿っています・・・。
説明項目が増えるということは、ひとえに調査項目が増えることとなり、宅地建物取引士の業務負担が増加する。一方で、地方は都市部と違い、不動産売買価格が上昇しておらず、貰える仲介手数料の単価が下がっている・・・orz 「働けど働けど我が暮らし楽にならず・・・」の心境ですッww
宅建業法が改正され、業界団体主催の勉強会等で、改正点の説明や、対応方法についてレクチャーを受けるのですが、現場の意見として「本当にこの調査項目って必要?」と感じることが多々あります。今回取り上げた「建物状況調査」も、中古不動産流通を促進させるという大義で、宅建業法の2018年改正で導入されたのですが・・・。

石綿(アスベスト)や耐震診断の重要事項説明
重要事項説明項目に、建物状況調査制度とよく似た制度が、既に平成18年頃の宅建業法改正で導入されておりました。その項目とは「建物について、石綿の使用の有無の調査の結果」と「建物の耐震診断の有無」で、売買・賃貸共に重要事項説明に追加されました。確かに、健康被害を誘発する要因となる「石綿」や、地震国日本において「耐震性」は重要ですよねッ!
しかし、この両項目は、現場ではイマイチ機能していない、はっきり言えば役に立っていない重要事項説明項目になっている気がしておりますッ! 石綿の調査も耐震診断の調査も義務化されていないんですね・・・。個人の中古住宅で、石綿調査や耐震診断をされている物件は、ほぼ、ありません・・・。orz
「上様、恐れながら申し上げます。本丸御殿は、石綿調査及び耐震診断を行ってござりまするか?」
「苦しゅうない、越後屋、面をあげよッ! お主も悪よのぉ、そのような調査は不要じゃッ!」
「御意!」多少、デフォルメしておりますがッww わざわざ費用をかけ調査する売主様は皆無です。
一方で、我々業者は、売買契約書の特約事項等で「本件建物は昭和50年代の建物の為、建材に石綿が含まれている可能性が高く~~。解体するときは~~。」というふうに保険をかけているのが現状です。
義務でないことを重要事項説明とする必要があるのか、個人的に疑問を感じます。耐震診断も同様です。
建物状況制度の概要について
では、そもそも「建物状況制度」とは何ぞや?という疑問もあるかと思うので、簡単に概要を説明。
<建物状況調査とは>
国土交通省の定める講習を修了した建築士が、建物の基礎、外壁など建物の構造耐力上主要な部分及び雨水の浸入を防止する部分に生じているひび割れ、雨漏 り等の劣化・不具合の状況を把握するための調査
<制度の概要>
・2018年4月1日より宅建業法の改正に伴い、導入
・売主様と媒介契約を締結する際、建物状況調査の斡旋の有無が記載事項になった。
・建物状況調査は、売主の義務ではない。「実施は任意」
・売買の重要事項説明書に建物状況調査の有無を記載。
・建物状況調査「有」の場合、調査内容を売主・買主が双方確認し、確認したことを書面化する。
・建物状況調査は、既存住宅状況調査技術者が行う。⇒ 検索サービス
・調査は、国土交通省の定める基準に従い、原則、目視による非破壊調査(調査時間は3時間程)
・管理人の地域で、実際に調査費用を各実施業者に問い合わせをしたところ、5万~8万円程度。
・住宅瑕疵担保責任保険と組み合わせて使用すると効果があるのでは・・・という、ふれこみ。
建物状況調査制度の現状
現在、2020年4月1日からの民法大改正に伴う、セミナーが不動産業界では行われております。売買に関しては、従来の「瑕疵担保責任」がなくなり、「契約不適合責任」に変更となり、契約条件(引渡条件、品質等)を明確に定義する必要性が求められるようです。その意味で、建物状況調査制度は、普及する可能性があるのかもしれません。。。
しかし、今の現状は・・・。地場の知り合いの売買担当者に10人程、建物状況調査を実施したことがあるかについて確認しましたが、誰もいませんでしたッww そーだよねッ、義務化されてないもんねッ!
「上様、恐れながら申し上げます。~略~」、「苦しゅうない、越後屋、~略~」、「御意!」以上。
一方で、中古物件で「フラット35」を利用して住宅ローンを組む場合は、中古の建物が住宅金融支援機構が定める技術基準に適合していることを示す適合証明書が必要となるため、適合調査を行った案件が複数ありました。義務だから、お金がかかるけど、致し方ないですもんねッ・・・。
結論としては、普及するには「義務化」しないと難しいということなんでしょうねッ!世知辛いですね