崖崩れに思う、不動産の管理責任

時代と共に変わりゆく「土地基本法」

 昨日、バブル隆盛期の1989年に制定された「土地基本法」の改正案がひっそりと閣議決定された。同法案では、バブル期の投機的取引を抑制する規定等を設けていたが、あれから30年、時代は大きく変貌。

 今回の改正案では、「土地の適正な利用」や「管理」を「所有者ら」の「責務」として位置付けることが柱になっている模様で、所有者の土地の管理が不十分な場合、周辺への悪影響を考慮し、所有権に制限を加えることができるようになる見通しらしい。あわせて、昨今話題となっている「所有者不明」の「土地」を防止することも目的とした改正のようです。

閣議決定翌日に起きた悲劇

 本日、すなわち、土地基本法の改正案が閣議決定された翌日、神奈川県逗子市の住宅街で、雨が降っていないにも関わらず発生した土砂崩れにより、尊い命が失われるという悲劇が発生いたしました。突然の訃報を受けたご家族の方々の心情を慮るとなんともやり切れない気持ちになります。

 管理人もテレビ報道で現場の映像を視ましたが、崖が高く、かなりの急こう配で、崖の端部のみ石積擁壁となっており、崖の上には、中高層マンションが建っている状況を確認しました。そして、この場所は、行政により土砂災害警戒区域(イエローゾーン)に指定をされていたことを知りました。

 不動産の売買の現場においては、「崖」、「擁壁」は、特に注意を要する事案になりますが、土砂災害警戒区域自体は、そこまで気にする人はこれまでいなかったのではないかと思います。

今後求められる「不動産」の「管理責任」

 人口減少社会となっている日本では、今後「空家」の問題に加え、「土地」や「工作物」の「管理の問題」が、あちらこちらで発生することは間違いないと思います。今回、崖(工作物)の崩落により、尊い命が失われることとなったのですが、残念ながら、現状では今後も同様の事案が発生すると思います。

 実は、本日の報道を聞いた時の私の第一印象は「ああ、やはり、最悪の事態が起こってしまったんだなぁ」という想いだったのですね・・・。と、言うのも、不動産管理の現場で、既に体験しており、その際は、たまたま通行人がいなかったので、人的被害は出なかった。よって、報道されなかっただけ・・・。

 昨年は特に「天災」(大雨、強風)が多かったせいか、例年になく様々な事案を体験したのですが、起こった原因を全て「天災」の一言で処理することは到底できない事案もありました。一連の根底には、価値を生まなくなった「不動産」に対する「所有者」の「無関心」や、中古市場で適切に評価されにくい「建物価値」(メンテナンスが価値に反映されにくい)が遠因となっている気がしております。

 土地や建物、擁壁等の工作物は、時間の経過により劣化しますので、本来、所有者の方による適切な管理が必要となるのですが、メンテナンス費用がかかること(メンテナンスしても報われにくいこと)、遠隔地にいて管理ができないこと等の事情により、「適切な管理」がなされていない現状があります。

 我国では、不動産は「一所懸命」の言葉にあるように「価値があるもの」として捉えられてきたのですが、今となっては、捨てるに捨てれない厄介な「負動産」になり下がってしまったのかもしれません。
 
 いずれにせよ、不動産の「管理の問題」は、社会問題でもあるので、個人の資産(不動産)についても、「適切な管理」をどう行っていけば良いのか、よくよく考え直す時機にきていると思います。

 もしかしたら、不動産について、車検制度のような「定期点検」が義務付けられたり、「修繕積立金」や、「解体引当金」のような制度ができるのかもしれませんね。今後の動向を見守りたいと思います。

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