事業系賃貸物件の重要事項説明の注意点

事業系賃貸物件の重要事項調査は「高難度」

 2020年2月15日付「大手FC系賃貸サイトに掲載できないテナント物件」というブログタイトルで、大手FC系賃貸仲介会社が、事業系賃貸物件(テナント物件)に注力しないことの理由を管理人の個人的見解として記述させていただきました。

 私見として、「手間がかかり、効率的に稼げない」ことと「重要事項調査が高難度で経験が必要」という2点をその理由としたのですが、後者の「重要事項調査が高難度で経験が必要」と感じた理由を、不動産会社の現役社員である管理人が、説明をしていきたいと思います。なんだか、ホームページのタイトル、「エステートデザイン」(不動産の考察)に値するブログ記事になりそうですッww

 ちなみにこのブログ記事は、これから事業系物件を賃貸仲介会社に募集依頼をしようと考えておられるオーナー様にも役立つのではないかと思います。少しでも賃貸仲介会社の負担を減らすことが、その後の募集活動に大きく寄与すると考えますし、重要事項調査項目の注意点を意識していただければ、契約に拘わるトラブルを減らすことができると思います。

オーダーメイドの「重要事項説明書」と「賃貸借契約書」

 事業系賃貸物件の「重要事項説明書」と「賃貸借契約書」は、そもそも入居される借主様の「利用用途」によって、調査項目や、契約書の記載方法(特約事項)等が異なってくるという特徴があります。従って、住居系賃貸物件と違い、オーダーメイドで使いまわしができないことになります。
 
 また、以前、協会が主催する「売買の重要事項説明のセミナー」で講師の方が、「お客様の利用用途に沿った重要事項調査を行うことが必要だ」と仰っておられましたが、この考え方は、事業系賃貸物件に通じるものがあると感じております。

 そして、管理人の個人的な見解ですが、協会の事業用賃貸物件の重要事項説明書の雛形には「欠陥」があると感じております。と、言うのも、協会の事業用賃貸物件の重要事項説明書の雛形は、宅建業法で求められている最低限の調査説明事項項目が用意されておりますが、入り口部分に問題を抱えております。

協会の事業系賃貸物件の重要事項説明書の追記事項

 住居系賃貸物件ばかり仲介していると、宅地建物取引士試験で学んだ「都市計画法」や「建築基準法」等の法令知識が欠落していきます。「住居系」は、そもそも「用途」が固定されているため、建築確認等を受けていれば、基本的にチェックが完了していることから、どうしても「法令関係」への意識がなくなってしまいます。

 だから、たまに「事業系賃貸物件」を取扱うと、本来確認が必要な「法令関係」の調査をすっ飛ばしてしまい、「大失敗」につながることがあります。嗚呼怖い、怖い・・・orz  
 まぁ、最近でこそ、建物の「用途」を変更する「コンバージョン」や、建物の「大規模改装」を行う「リノベーション」が注目されたことから、「法令」について意識をする機会も増えてきているような気もしますが・・・。

 よって、ここでは、事業系賃貸物件の重要事項説明書に少なくとも「都市計画法」の「用途地域」の追記と建築基準法の「用途」を追記事項として入れるべきと管理人は考えております。

都市計画法に関する重要事項の追記事項

 都市計画法の「用途地域」では、各地域で出店が可能な「店舗」や「面積」が定めれております。
お客様から「使用用途」を聞いておきながら、その「使用用途」が実現できない「用途地域」の物件を紹介し、契約すると「用途地域違反」で「アウト」ですねッ。

 借主様は、当然「用途地域」の業種制限等、ご存知ないでしょうからねッ・・・orz  例えば、住居系の用途地域で、キャバレーは開業できません。商業系エリアの1階で適当な店舗がなく、隣接する地域に空き店舗があった場合等は、要注意ですねッ!

 ここでは、お客様からしっかりと「使用用途」を聞くと共にその業種の「正式名称」を確認し、都市計画課に確認する慎重さが求められると思います。ついでに、都市計画道路等の都市施設の計画があるかも確認するのがベターです。ちなみに業種によっては、関係各所に開業の際の届け出等が義務付けられている場合もあり、用途地域違反で開業ができなくなります・・・orz

建築基準法に関する重要事項の追記事項

 次に、建築基準法の「用途」。これは、事業系賃貸物件の「肝」であるはずなのに、何故か重要事項の調査項目から外れております。この建築基準法の「用途」ですが、そもそも建物は、その「利用方法」によってそれぞれ求められる「性能」が違うのですねッ。従って、利用方法にあった「用途」につき、それぞれ建築基準法で「性能」を定めましょう、ということになっているんですねッ。

 つまり、建築確認申請、完了検査を受けた建物は、その時に「用途」が定まっているため、その「用途」にそぐわない利用方法ができないことになってしまいます。ここで気を付ける必要があるのは、元々1階に「店舗」があった空き物件に「飲食店」等の「別」の「用途」の業種を紹介する場合です。

 先程のケース場合、おそらく、1階の建築基準法上の「用途」は「店舗」になっている可能性が高く、類似業種でもないため、「飲食店」で使用するには本来「用途変更」の手続きを本来踏む必要があります。(但し、用途変更する面積が200㎡以下の場合は、「原則」として用途変更が不要になります。用途変更する面積が合算して200㎡を超えると「用途変更」がその時点で必要となります。)

 その際には、「建築確認申請書」や「完了検査済証」等の建築図書があること、「ビルの定期調査報告」や「消防法関連」、「建築基準法」等の法令違反があった時に「是正」し、且つ、「飲食店」用途にするにあたり、必要な工事が可能か? ということを判断する必要があるのですが、この領域になると、もはや、建築士のレベルになってきてしまいます。

 とりあえず、「用途変更」の場合には、「業種の正式名称の確認」と「建築指導課」に「用途変更」が必要かを必ず確認し、建築関連図書があることを確認し、重要事項説明書に売買のように記載。

 次に建築士に建物の現況調査をしてもらい、建築指導課と折衝、「用途変更」の「実現可能性」と「費用」、「期間」について、十分に確認することが必要でしょうねッ。率直に言えば、「用途変更」の案件は拘わらない方が良いと思いますが。。。

ライフラインやその他設備に関する重要事項の追記事項

 売買の重要事項説明書では、上水道の引込官の口径が調査事項になっておりますが、事業系賃貸物件の場合は、そこまで調査事項となっておりません。水を多く使う業種によっては、調査事項だと思っていた方が良いと管理人は思います。水関係でその他、注意を要するのは、「水圧」と「水質」(水の匂いや、色)等かなぁと思います。水圧が低いと給湯器が利用できなかったりします。古い建物ですと水道管が錆びており、水が異臭を含んでいる場合があります。
 
 ちなみにガス管の引込官の口径も、火力に影響を与えると聞いたことがあるので、調査事項だと思っていた方が良いと思います。また、中華料理店などは、火力の関係でプロパンガスの使用を希望することが多く、都市ガスの物件の場合は、プロパン庫を設置し、引込工事が必要となります。

 それから電気の場合は、電灯の最大容量、動力が引き込まれているかが確認事項ですねッ。ある程度の広さの物件になると高圧受電をしているケースもあるので、要注意です。電気・ガス・水道のライフライン系の重要事項調査は、売買と同様の調査をしておいた方が良いと管理人は考えております。
 
 最後に、最近ですと光インターネットが導入できるかというのも大きいと思います。古いビルに関しては、インターネットの光ケーブルを入れる配管がなく、新たに露出で引込むことになりますが、そのルートによっては、他人の敷地を通らないと敷設ができないケースもあります。敷地の所有者の承諾が得られない場合、インターネットが最悪導入できない可能性があるため、契約前に、NTT等に調査をしてもらった方が良いと管理人は考えております。
 

事業系賃貸物件の仲介は危険と隣り合わせ

 ここまで、ダラダラと纏まりのない説明をしてきましたが、事業系の賃貸物件は、調査項目が多く、改装が前提となる為、宅地建物取引士だけの知識では、到底対応ができないということが、分かっていただけたのではないかと思います。
 
 上記の事を確認し忘れると、最悪、紛争になるケースが考えられます。そうなると「素人」の借主様の立場が保護されるケースが多く、業者はペナルティを受けることになります。事業系賃貸物件の仲介は「楽勝」と思うと、とんでもないことになりますよッ!ご用心!

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