外国人賃貸の現場からの実務 総論
賃貸物件での空き室対策で外国人への賃貸を推奨するけれど
春の異動シーズンの真っ只中ですが、毎年賃貸物件を探しに来店されるお客様が少なくなってきており、地方業者間での話でも、「盛り上がりに欠いたまま、何時の間にかシーズンが終わってしまったよね・・・。」と愚痴をこぼしあうことが恒例行事になりつつあります・・・orz
管理人が春の異動シーズンでのお客様が減っているのは以下の理由によると考えております。
(1)少子化で進学、就職で引っ越しをする人々がそもそも減っている。
(2)人手不足を背景に大企業を中心に求人意欲が高く、地方から人々が流出している。
(3)借主が自ら物件を探すのが主流となり、不動産会社への来店機会が減っている。
(4)数年前の引越業者の手配がつかない現象を踏まえ、企業が異動時機をずらしている。
(5)共働き世帯の増加や、働き方改革の流れで、企業が引越を伴う異動を控えている。
と、いうことになるのではないかと考えております。今年に関しては、新型コロナウイルスの猛威により、引越どころではない、という企業や個人の方も多いのではないでしょうか・・・orz
賃貸物件のオーナー様や管理会社にとっては、世の事情がどうであれ、空き室に借主様を斡旋し、入居していただかないとビジネスとして成り立ちませんので「空家問題」は喫緊の課題となっております。
そこで「空き室対策」の一環として、これまであまり積極的に受け入れてこなかった「高齢者」、「生活保護世帯」、「外国人」についても受け入れていこうという機運になってきており、「空き室対策」に関する自称コンサルタントの方々も、おしなべて推奨されております。
当ブログにおいては、現役の不動産会社の社員である管理人が、2020年2月12日記載の「生活保護制度と賃貸実務」に続き、「外国人賃貸の現場」で起こっている問題点や、対応策について意見を述べていきたいと思いますッ!

本当に外国人賃貸物件のニーズはあるのか?
賃貸物件のオーナーや管理会社が賃貸物件の入居促進へのターゲットして「外国人」に注目しても、「需要」がなければ始まらないのですが、「外国人」の「賃貸物件」への「需要」はあるのでしょうか?
管理人は某地方都市に在住しておりますが、「外国人」の方々の「賃貸物件」への「需要」は、結構あります。おそらく、その「需要」は、大都市だけではなく、地方の隅々まであっていると思われます。管理人が住む地域では、製造業やサービス業に従事する方、日本語学校や大学に留学する等の理由により多くの外国人の方々が来日されております。
管理人が外国人賃貸で対応した国で言えば、アメリカ人、オランダ人、スウェーデン人、ドイツ人、カナダ人、オーストラリア人、中国人、韓国人、ベトナム人、インド人、バングラディシュ人、ネパール人、フィリピン人等の方々がいます。欧米系の方々は、主に法人需要、中華系は留学、それ以外は製造業やサービス業、留学がメインになっておられます。特に、日本語学校ルートは、日本語学校 ➡ 短大・大学 ➡ 就職 といった流れができており、長期滞在型の外国人になってきているようです。
日本は、少子化による労働力不足問題から、何時の間にか「移民受入国家」へ移行しつつありますので、外国人の方々が「待遇面」で日本に魅力を感じる限り、増加すると思われます。従って、外国人の賃貸物件のニーズは「ある」と現時点では言えると思います。
外国人を賃貸物件に受け入れる際の問題点 総論
これまで、積極的に「外国人」を「賃貸物件」に受け入れてこなかったこともあり、現場では様々な問題が発生しており、対応に苦慮する事案もあります。特に「言語」や「文化」に関する問題は、一朝一夕に改善できる問題ではございませんので、頭が痛いのですが・・・。「外国人」の方々を受け入れていかないと「賃貸ビジネス」が成り立たないという側面もありますので、何とかやっていかざるを得ないのが地方の現状だと思います。
現場実務で外国人を賃貸物件に受け入れる際の問題点として下記の問題点があると感じております。
(1)重要事項説明書および賃貸借契約書の書式の問題
(2)契約形態および連帯保証人の問題
(3)管理の問題
(4)退去精算の問題
今回は、「総論」として(1)の重要事項説明書および賃貸借契約書の書式、(2)の契約形態および連帯保証人の問題を取り上げていきたいと思います。
重要事項説明書および賃貸借契約書の書式をどうするのか?
不動産会社は主に「全宅連」若しくは「全日」のどちらかの団体に所属していることが多く、各団体共に、不動産の契約書式の雛形を会員不動産会社に提供しております。また、不動産のフランチャイズ本部も加盟店にオリジナルの不動産契約書式の雛形を提供しております。
ただ、現状では、管理人が知る限り、各団体共に「英語」の賃貸借契約書式はございますが、その他の言語の賃貸借契約書式は無いのではないでしょうか?特に重要事項説明書は日本語バージョンしか見かけたことがありません・・・orz
しかも、管理人が所属している団体の英語の賃貸借契約書は「英語」のみの表記になっております。日本語の賃貸借契約書とほぼ同じ内容らしいですが、条項や、表現が必ずしも一致しておらず、英語が不得手な人には、利用しにくい一品に仕上がっておりますッww。
それと、当たり前の話ですが、契約は貸主・借主双方が、同一内容で合意しておかないと意味がございません。また、そもそも契約書に署名・押印したからといっても、本人が「理解」していないと契約したとはみなされず、最悪、その契約が「無効」になる可能性がございます。外国人の場合、契約を締結する場合に、本人が「理解」といえる水準で説明ができているのか、いつも気になります。英語圏以外の方の場合は、本人が高レベルで日本語若しくは、英語に精通しない限り、「個人契約」は難しいといえると思います。
当ブログをご覧になられた所属団体の方々におかれましは、現場の意見を踏まえ、早急に日本語ベースで外国語訳をつけた、一体型の契約書式を、しかも複数言語で用意していただきたいと思いますッww
契約形態および連帯保証人の問題をどうするのか?
次に契約形態をどうするのか?という問題点について意見を述べていきたいと思います。外国人に限らず、日本人も同様なのですあ、契約形態、借主、連帯保証人をどうするか?というのは、非常に大事な問題だと思います。
管理人のこれまでの経験上、外国人の方と賃貸借契約を締結する際は、仕事関係の場合は、「法人関係名義」で、留学関係の場合は、「学校関係名義」で契約を行うことを「強く推奨」しますッ!!
外国人の方と接する場合、どうしても「言語」と「文化」の問題が発生いたしますので、その外国人の方により利益を受ける「勤務先」や「留学先」関係の方々に、契約名義人(借主の地位)を引き受けていただき、事実上の、身元引受人になっていただくことが、後々重要になると思います。
外国人の方々が何か問題を起こした際に、契約名義人(身元引受人)を巻き込むことにより、スムーズに問題を解決できた事案が結構ございました。また、家賃も借主から給料天引き等で払っていただけるので滞納のリスクも抑えることができます。結構、おおらかな国があるんですよねぇww
逆に契約形態で外国人を借主、連帯保証人を「勤務先」、「留学先」関係にした場合はどうなるのでしょうか? この形態で契約すると割と不都合なことが多かったりします。まず、借主が契約形態を理解していなかったという理由で契約が「無効」になる可能性があります。
最近、流行の家賃保証会社も外国人が借主の場合、本人が保証委託契約書(日本語)の中身を理解できることを条件にしている関係で、事実上、使えないと思った方が良いと思います。
連帯保証人を引き受けてくれた方々も「家賃滞納」については、比較的協力をしていただけるのですが、管理上の問題、例えば「ゴミ捨て方」等には、非協力的な傾向があります。
そして、借主「外国人」、連帯保証人「勤務先関係」or「留学先関係」の問題点は、借主である「外国人」の方が、「勤務先を退職」or「留学先を退学」し、本人が引き続き、賃貸借を望む場合に問題になります。借主との関係が切れた連帯保証人からは、連帯保証人の地位を辞めたいとの申し入れがあるのですが、借主の方が貸主が承諾する「新たな連帯保証人」をみつけられないケースが殆どです。この状態で家賃の滞納問題、管理上の問題が発生すると、非常に面倒な案件になってしまいますので、ご用心をッ!
これが、鉄板スキームである、借主が「勤務先関係」or「留学先関係」で、連帯保証人が「外国人」であれば、勤務先を退職するのであれば、借上社宅からでていってね、留学先を退学するのであれば、学校寮からでていってね、の当事者間の問題で解決できてしまうんですねぇ。
以上、外国人に賃貸物件を提供するには、「身元引受人」を「借主」にするのが、「鉄則」ですッ!