外国人賃貸の現場からの実務 各論

地方にも増えている外国人の現状

 管理人が住む地方都市においても、近年街中を歩くとあちこちの国の言語を聞くことができる。管理人が若かりし頃は、外国人と言えば、アメリカ、フィリピン、中国、韓国辺りの方が殆どで、それもごく少数。外国人の方が街中を歩いていると、珍しい人がいるという目で見ていた気がする・・・。
 
 ところが、近年は外国人観光客が増えたのは勿論のこと、在留する外国人の方が本当に増えていることを実感することが多い。少子高齢化・労働力不足を迎えている日本では、地方の私立大学や短大および専門学校に「留学」で来日された学生の方、これまで多かった「技能実習」で来日された労働者の方、そして、2019年4月1日に出入国管理法が改正され、新たな「在留資格」となった「特定技能」により、来日された労働者の方が増え続けている。特に「特定技能」については、2019年は最大4万7750人、5年間で34万5000人の受け入れを見込んでいるラシイ。

外国人と賃貸借契約に締結するうえでの注意点

 管理人が外国人の方と幾つか賃貸借契約を締結し、実際に経験したことや、感想を皆様にご紹介していきたいと思います。ちなみに管理人は、外国人の方に対し「特別な偏見」や「特別な感情」を持ち合わせていないことを先ず最初に申し述べておきたいと思います。ハイッ!

 外国人賃貸を実施するうえで、「言語」、「文化」の壁があると感じております。コミュニケーションツールである「言語」が機能しないと外国人の方と意思疎通することが難しく、賃貸借契約や、賃貸管理、退去精算などの賃貸実務に多大な影響を与えます。また、「文化」も難しい事案であると感じております。基本的には「郷に入れば郷に従え」と言いたいところですが、相手のこともある程度、尊重しないと話し合いにならないと思います。

 現在、空き室に悩まされている地方の現場としては、相手が誰であれ、迎え入れたいところですが、外国人を賃貸住宅に迎え入れるには、それ相応の準備をしておかないと後々、後悔することになると思います。「段取り八分」ではございませんが、何事も事前準備が必要ですッww

 また、共同住宅で外国人の方を受け入れる場合は、既にお住いの方にも安心して頂けるような施策をとる必要があると感じております。島国の日本では、未だ、保守的で外国人の方の対応に慣れていない気がします。この状態でいきなり、共同住宅に外国人の方を見かけると不安に感じる方もいるようです。

 管理人の会社が委託管理している物件を外国人の方に賃貸することになった時は、既にお住いの方々に外国人の方がお住まいになることを事前にアナウンスしたこともありました。また、偏見だと言われる可能性もありますが、セキュリティシステムを導入したこともありましたね。

契約書式と契約内容の説明の注意点

 2020年3月15日記載の「外国人賃貸の現場からの実務 総論」でも記載いたしましたが、外国語の契約書と受け入れ先を借主とするスキームは鉄板だと思います。管理人の会社では、原則として、契約時に入居者である外国人の方と借主である受入れ先の方に同席してもらっています。そして、英語圏の方には、英語バージョンの契約書で、その他の言語の方は、とりあえず日本語の契約書で、同席をした関係者の方に通訳をしてもらうことにより、契約を行っております。

 理想を言えば、不動産会社で外国語を話せるスタッフを雇用しておくことが良いかと思いますが、地方では不動産会社の規模が小さく、また、外国人の契約案件がそれほどないこと、他民族の言語に対応するのは困難という事情から、暫くはこの方式でいくしかないと思います。最近は、電話での通訳サービスを提供してくれる会社もできており、自動翻訳機が機能するまでは、何とかするしかない・・・orz

 また、外国人との契約内容でトラブルになるのは、主に退去関係、「解約予告1ヶ月前」や「退去時の清掃費等の原状回復費の負担」に集約されると思います。先ず、「解約予告1ヶ月」が長すぎるとの苦情があってましたねッ。そして「退去時の清掃費」、これは近年、対日本人方でもトラブルになるケースがあるのですが、外国では、借主がある程度の清掃をすればOKのところが多いらしく、逆に引渡しの時も専門業者によるクリーニングがなされず引渡されることが多いという背景があるようです。また、DIYが行われる文化からか、補修費の見積もりを見せると「高い」という人が多いこと、多いこと・・・orz

 外国人の方は、賃貸物件を借りる際は、契約内容についてあまり文句を言わないのですが、おそらく、「内心」では、きっと「不満」だったのでしょうねッ。とりあえず、借りるまでは我慢的なッww。

 この問題については、それぞれのお国の制度もあると思いますので、「正解」は無いとおもいます。現場としては、事前にリスクを貸主に説明。外国人の方には、関係者を通じて、こちらのルールで賃貸借契約を締結することを宣言し、「納得」していただくしかないと感じております。ルールなのだよッ!と

管理人が考える外国人賃貸の利点

 それでは、管理人がこれまで経験した事例を踏まえ、外国人賃貸の利点についてお伝えします。

(1)外資系の大会社の幹部(公務員的な方も含む)
福利厚生費が充実しており、いわゆる住居手当の額が高額ですッ!そして、2年~3年で異動されていくため、長期で物件を借り続けられるリスクは少ないという利点?があります。また、身元引受先がしっかりしていることから、比較的トラブルが少なく、トラブルがあった場合でも関係先が対処してくれるので安心感があります。家賃滞納は殆どありませんが、退去時の原状回復費用が事実上の入居者負担となっているため、退去時に揉めることが多少あります。英語圏の方が多く、コミュニケーションが比較的取りやすい特徴があります。

(2)技能実習や特手技能により来日された方
現在空き室に悩む大家さんに朗報となるのが彼らの存在かもしれません。管理人の偏見かもしれませんが、彼らは、日本で働いて稼ぎ、所持金を増やそうと考えていることから、家賃には、お金をかけようとしません。従って、物件に対する要求水準が低く、安さ、最優先で選んでくれるという特徴があります。アジア圏(中国・韓国を除く)の方が多い印象です。身元引受先の安定感はバラツキが多く、トラブルが生じた時の対処にやや不安が残ります。また、語学的な問題から、コミュニケーションが取りづらい印象があります。

(3)留学のために来日された方
日本語学校、短大、大学に留学された方々ですが、管理人の地域では日本語学校から、短大、大学編入というスキームができているようです。仕送りがある方もいるようですが、殆どが苦学生でアルバイトで生計を立てているようです。従ってアルバイトをし易い場所で、且つ、予算内の物件をシビアに吟味する傾向があります。身元引受先が学校の為、家賃滞納以外のトラブルについては、比較的安心ができます。片言ではありますが、日本語を学んでいるせいか、コミュニケーションをとることができます。

以上のように、管理人が住む地域では主に(1)~(3)の需要があり(1)はハイグレード高価格帯、(2)は築古現状の格安な価格帯、(3)はやや築古現状の若干安い価格帯、で棲み分けができつつあります。結果、築古物件を持つオーナー様にとっては、貸出先の選択肢が増えたと言えると思います。

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